Necos イチロー

イチロー
この子は2週間ほどうちにいた野良猫です。写真もたったの3枚しかありません。しかしちょっと印象深かった猫なので別枠を設けました。名前はイチロー。06年のちょうどWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)が開催されていた頃だったので、その時活躍してたマリナーズのイチロー選手の名前をそのままつけました。


この子との出会いは朝、お店に出勤の時間でした。家を出てやや車を走らせた時、路上の隅に茶色いボロ切れののようなものが。よく見ると猫の死体というのがわかりました。ああ、轢かれちゃった猫だな、かわいそうに、と思って通り過ぎようとした瞬間、その背中がピクリと動いたのです。

もう、ダメです。生きてるのを見ちゃいました。どうしよう。病院につれていこうか、手遅れだろうか…もしも大手術とかなったら、治療費払えるんだろうか…助かったとしてもキズが深くてそれこそ半身不随とかなってたら…。うちにはすでにちーかぶブラザーズがいるし、家の事情でこれ以上飼えない…。里親にだしたとしても体の不自由な猫に引き取り手があるだろうか…?瞬間ですが、本当に色んな事を考えました。で、その場で旦那に電話をかけて相談し、とにかく病院に連れて行く事にしました。

幸い内臓に損傷はなくキズは足の骨折だけでした。しかし脳や脊髄の損傷の有無はしばらく様子を見ないとわからないという事でした。治療中、ずいぶん暴れてお医者さんは苦労されたようで「この子は完全な野良のようなので、ぜんぜん人間に慣れてないですね。それに性格的に見ても、たぶんこの後飼う事は出来ないと思いますよ」と、言われました。まあ、助かってよかった。どうせ治るまでは動けないんだし、しばらく店の方に置いておこうということになりました。幸い、うちのちーかぶが前に使ってた大きなケージが店にまだ置いたままだったので。

手術後のぐったりとしたイチロー

それから、お店の中でしばらく療養していたのですけど、まー言われた通り慣れてくれません。餌をあげても食べてくれません、餌の器を入れようとしただけで フーッ!と言われちゃいます。こちらの姿が見えなくなってからそっと食べてたようです。だから結局食べてるところは一度も見る事が出来ませんでした。汚れたタオルを取り替える時なんか大変です。手なんか入れようもんなら鋭い爪が飛んできます。分厚い溶接用みたいな手袋をはめて、どうにかこうにか交換してました。

一週間ほど経って、どうやら脳の損傷もなさそうだとわかり一安心。キズも少しずつ回復し、トイレも動けずに垂れ流しだったのが、猫砂トイレを使えるようになってきました。相変わらず、こちらの姿が見える間は一切餌に手をつけませんが、器の出し入れくらいで威嚇されることもなくなってきました。ちょっとは慣れてきたのかな…とうれしく思う反面、このまま情が移るとマズイ、という気持ちもありました。うちではやはり飼えない。里親探しは今の段階では少し難しそう。このままもとの野良に戻ってもらうしかないのかな…。

そして、2週間が経過しそろそろ大丈夫じゃないかというぐらいまでキズが回復しました。さすが野良、回復力がある!朝、出勤すると猫砂をひっくり返してたり、どうもケージ内をそうとう動き回っている形跡が見えるようになってきたので、とりあえず、この狭いケージからだしてやるか。しかし店の中ではちょっと…。自宅の中にはすでにちーかぶがいるし、こんな野生の塊みたいな子を放したらなんか恐ろしいことが起こりそう。やはり野良なので外で放したほうがいいかもしれない……。じゃあどこで放すか…? 考えた末、うちの庭で放したらいいんじゃないかという結論に。事故現場からも近いのでおそらく近所の野良。うちの庭も縄張り内かもしれないし。動けるようになってるとは言えキズもまだ万全ではないだろうし、もうしばらくリハビリも兼ねて比較的に安全なうちの庭をウロウロするぐらいから始めた方がいいだろう。今イチローを入れてるキャリングケースをもうしばらく寝床として使わせることにして庭の隅に置いておくか…。もう少し慣れてきたら里親に出せるかもしれない…。そんなこんなを旦那と相談して、やはりうちの庭に放す事にしました。

イチローを入れたキャリングケースをベランダに置いて扉をそっと開けてみました。…と、次の瞬間、ズダーーーン!!とキャリングケースを蹴るけたたましい轟音!弾かれたようにイチローが遥か彼方に…!それはもう脱兎のごとく、振り返りもせず、塀をあざやかに飛び越え、あっという間に見えなくなってしまいました…………。私と旦那はしばし呆然……。

キズは完治していた…という事よりも、もー、その逃げっぷりに驚いちゃいました。でも、当然と言えば当然ですね。なにしろ事故にあった後、いきなり知らない人間に連れ去られ病院であれこれ恐ろしい事をされて、しかる後に狭い檻に2週間も閉じ込められたのです。それはそれは恐怖体験だったことでしょう。「危なかった!殺されるかと思った!」ってなもんでしょうね。

イチローとはそれっきりです。近所の野良という事は確かなので、今もその辺を走り回っていると思いますが…。それ以来、自宅付近で似たような毛色の野良を見つけると、イチローか?!…とついつい目で追ってしまうのです。

傷跡が痛々しいイチロー